苗字を4回変えた少女の成長を描いた映画『そして、バトンは渡された』を視聴。
テーマは“愛”。様々な事情、様々な愛を表現している感動映画。
この映画は知らないで観た方が楽しめます。
面白さは保証するから先入観なしに観ることをおすすめします。
ネタバレには注意。
あらすじ&予告
まず、あらすじを載せておく。
血の繋がらない親に育てられ、4回も苗字が変わった森宮優子は、わけあって料理上手な義理の父親、森宮さんと2人暮らし。今は卒業式に向けピアノを猛特訓中。将来のこと、恋のこと、友達のこと、うまくいかないことばかり…。
一方、梨花は、何度も夫を替えながら自由奔放に生きている魔性の女。泣き虫なみぃたんに目いっぱい愛情を注いで暮らしているようだったが、ある日突然、愛娘を残して姿を消してしまった。
そして、優子の元に届いた一通の手紙をきっかけに、まったく別々の物語が引き寄せられるように交差していく。「優子ちゃん、実はさ…。」森宮さんもまた優子に隠していた秘密があった。父が隠していたことは?梨花はなぜ消えたのか?親たちがついた〈命をかけた嘘〉〈知ってはいけない秘密〉とは一体何なのか。
2つの家族がつながり、やがて紐解かれる《命をかけた嘘と秘密》。物語がクライマックスを迎え、タイトルの本当の意味を知ったとき、極上の驚きと最大の感動がとどめなく押し寄せる―。
公式HPより引用
ネタバレしてから見て欲しくないので、予告も貼っておく。
ここまでで興味を持ってくれますように。
2つの家族
ストーリーは2つの家族を追う形で進んでいく。
血のつながらない父と娘。森宮さんと優子。
目的のためには手段を選ばず、夫を替えながら自由に生きる梨花。
梨花は4つの苗字を転々とすることになるのだが、それには深い訳があって、そんな彼女の歴史を少し振り返る。
水戸優子
子どもが欲しい梨花は子持ちの独身、水戸さんと結婚。
「みぃみぃ」泣くみぃたんの母になる。
梨花はこの頃から病気で、子どもが産めない身体だったという。
そして自身の体調のこともあり、ブラジルに転勤になる夫についていけない。
喧嘩していたことを見ても、水戸さんには病気のことを話していなかった気がする。
田中優子
梨花とみぃたんは二人暮らしになる。
いつ離婚したかはわからないが、この時の苗字は梨花の旧姓である田中になっている。
パパが大好きで毎週のように手紙を出していたみぃたんだったが、梨花によって手紙は投函されず。
パパから届いていた手紙も、梨花によってみぃたんには届かず。
なんとしてもみぃたんを手元に置いておきたい梨花は手段を選ばない。
子どもが産めないからこそ“子ども”に憧れを抱き、子どもを愛する。
この時の収入源は梨花のパートだけだったにもかかわらず、梨花は服等に散財。
後がないからこそ“今”を生きていたのかもしれない。
救いは、梨花のみぃたん愛が嘘ではななかったこと。
みぃたんがピアノを弾きたいというと、ピアノ持ちの独身男性を探す旅に出る。
泉ヶ原優子
そうして泉ヶ原さんと結婚をした梨花。
大きな家、大きなピアノ、沢山のお金。
うんと年上の泉ヶ原さんは、梨花がお金目当てで近づいてきた事に気付きながら受け入れる。
なりふり構わずにみぃたんのことだけを考えて突っ走る梨花が愛しく見えたという。
年上の余裕、お金持ちの余裕。
亡き妻が使用していたピアノをみぃたんが弾いてくれる。
そこにも嬉しさを覚えるくらい出来た人。
梨花が急に家を出て行った時もみぃたんを支え、梨花が瘦せて戻ってきた時も理解を示していた。
他に男を作って出ていくときも、自分のことは気にするなと、後押しする。
言わない優しさってあるんだなと、そう感じた。
梨花は自分が長くないことを悟り、ふたりも母親を亡くしてははみぃたんがかわいそう、そして泉ヶ原さんも年を召していたから長くはない。
という現実的な理由で“次”を探す旅に出る。
自分の病気のことは笑顔で必死に隠し通しながら。
森宮優子
最終的に生き着いたのが森宮さん。そして森宮優子。
みぃたん=優子という構図が分かった時に、全てがつながった。
森宮さんは東大卒で一流企業勤務。
堅物な性格でお金持ち。
だからこそ梨花は森宮さんに優子を信じて託したんだと思う。
数々の親から託されたバトンを森宮さんは必死に守ってきた。
沢山の愛情を感じ、注いできたからこそ優子と早瀬くんの結婚も頑なに拒む。
愛情があるからこその行動。
ここまでの描かれ方で色んな感情にさせられたけど、最終的に悪い人がいなく、皆それぞれの愛情、それぞれの信念を貫いていたように感じる。
繋いだバトン
数々の親から繋がったバトン。
目的のために手段を選ばない梨花は、自分は子どもを作れない身体。
そうしてみぃたんの母になった梨花は本当の愛情を注ぐ。
何をするにもみぃたんのことを想い、それこそ手段を選ばない。
「笑っていればラッキーが転がり込む」という梨花の信念も、梨花の生い立ちから考えると深いし、泣き虫みぃたんが常に笑っている優子に成長したのも感慨深い。
優子の結婚式。
「父が三人もいて、皆に愛された。だから今の私がいて、幸せ者。」と、優子。
それに対し、
「みぃたんがいたから今の私たちがいる。」
「人生が眩しいくらいに色づいた。生きる意味になった。」と父たち。
こうして、梨花から始まったバトンを数々の父たちを辿って大事に大事にみぃたんこと優子を育ててきた。
全ての親の教えが詰まった森宮優子は早瀬くんと結婚。
早瀬優子になり、自分が親になる番。
そうして、バトンは渡される。
優子がバトンだとすると、走者は母である梨花。
父たちの力を借りながら、梨花が繋いできた。
バトンはもちろん儚く重要だけど、“愛”で、沢山の“優しさ”で、保ち、走り続けた梨花と父たちも素敵だなと感じた。
詳細
『そして、バトンは渡された』
【原作】
『そして、バトンは渡された』著 瀬尾まいこ
累計発行部数100万部を突破している、令和最大のベストセラー。
制作国:日本
製作年:2021年
上映時間:137分
興行収入:17億2000万円
スタッフ&キャスト
監督:前田哲
優子役:永野芽郁
森宮さん役:田中圭
早瀬くん役:岡田健史
みぃたん役:稲垣来泉
水戸さん:大森南朋
泉ヶ原さん:市村正観