PopScorn

映画はポップコーンと共に。

【グリーンブック】私は私、区別させない。

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黒人と白人、男と女。

二元論、カテゴライズ。

 

黒人差別について、コミカルに表現した『グリーンブック』を視聴。

差別の歴史や悲惨さについて理解が浅い私が、差別について考えるきっかけになった作品。

対に位置するふたり

天才黒人ピアニストのドクター・シャーリー。

運転手として雇われたイタリア系アメリカ人のトニー・“リップ”・バレロンガ。

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生まれも育ちも、性格も価値観も全く別の人生を歩んできたふたりが8週間のアメリカ南部ツアーへ向かう。

黒人のシャーリーと白人のトニー。

品が良いシャーリーとガサツなトニー。

家族持ちのトニーと孤独なシャーリー。

とにかく2人は正反対で、価値観が合わない。

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家に来た黒人のコップをごみ箱に捨てるような黒人差別を行っていたトニーが、アメリカ南部にはびこる、筋の通っていない差別を目の当たりにして考えを改めはじめる。

グリーンブック

グリーンブックとは、1936年から1966年まで毎年出版された、黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブックのこと。

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この映画の背景は、まだ人種差別が歴然と残る時代1962年。

同じ席で食事をすることも、同じトイレを使用することも許されない。

そんな時代に重宝された本「グリーンブック」

才能だけでは人は動かない

天才ピアニストがツアーに選んだのはアメリカ南部。

差別が根強く残っている地域。

なぜシャーリーはわざわざそんな地域を選んだか。それは“信念”だという。

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才能だけでは人は動かず、勇気・信念が人の心を変える。

シャーリーの音楽的才能を認め、自分たちで招いておきながら同じ席で食事をすることも、同じトイレを使用することも、「ここではそういう決まりだから」という理由で拒む。

信念でもなんでもない“風潮”によって差別を行う人々に対し、独りで耐えながら信念を貫くシャーリー。

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才能だけでは何も変えられないことを知っているからこそ、信念をもって立ち向かう。

そんな姿に胸を締め付けられた。

グリーンブック金言

最後に、本作で印象に残った金言を3つご紹介。ご堪能あれ。

何をするにも全力で

親父によく言われたよ。

何をするにも“100%の力を出せ”と。

仕事の時は仕事、笑うときは笑う。

食う時は“最後の食事だ”と思って食え。

 by.トニー・バレロン

品位のあるシャーリーに対し、雑でガサツなトニー。

車で、体に悪いフライドチキンを手づかみで汚く食べるトニーにシャーリーが注意したシーン。

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“何をするにも全力を尽くせ”と教えられて育ったトニー。

対で育ったふたりの強み。

両側からの意見があって、大人が形成されていく。

シャーリーはここで初めてフライドチキンを食して、美味しさを知る。

残った骨は、車の窓から放り投げろとトニー。

シャーリー意外にも受け入れ、窓の外へ放る。トニーは調子に乗ってドリンクを放る。

流石にドリンクはやりすぎなのか、シャーリーに咎められ、バック走行でドリンクを回収させられる。

ユーモアが効いてて面白いシーン。

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何かをやるときは一点集中。

休日の事を考えて仕事をして、「明日仕事だ」と思いながら休日を過ごしては、どちらも成果が出ない。

仕事は仕事、休日は休日。

何をやるにも100%。全力で挑む。

枠に収まらなくていい

黒人でも、白人でも、それに男でもない。

私はいったい何者なんだ?

 by.ドクター・シャーリー

天才黒人ピアニストのシャーリー。

様々な差別を我慢してきた彼は、男が好きなゲイ。

黒人としても、白人としても扱われず、さらに男でもない。

誰が決めたか分からない“カテゴリー”に収まらない自分に苛立つシャーリー。

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魂の叫びであり、主観ではモヤモヤイライラするかもしれない。

けれど、世の中は二元論で語れるほど単純にできてはいないし、区別なんて出来なくていい。

「私は私、あなたはあなた」

信念をもって、流されないこと。

心の底から思えるように自分を強く持つしかない。

寂しい時こそ一歩踏み出す

そうやってずっと待つのか?

寂しい時こそ自分から先に手を打たなきゃ

 by.トニー・バレロン

ひとり孤独に生きるシャーリーには、疎遠になった兄がいる。

ツアーが終わったら手紙を書いてみてはどうだと、提案するトニーに対して「兄は私の家の住所を知っている」とシャーリー。

自ら行動を起こそうとせずにずっと待っているシャーリーに、寂しい時こそ一歩踏み出せとトニーは言う。

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クリスマスの夜、無事に家に帰宅したトニー。

家では親戚を含めた大人数でクリスマスパーティーが行われている。

一方、シャーリーは独り。

寂しそうな顔で、”お守り”の翡翠の石を飾る。

トニーが盗んだ石であるにも関わらず、どこか嬉しそうなシャーリー。心情の変化が感じられた。

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クリスマスパーティー中のバレロンガ家のチャイムが鳴り、トニーが出る。

そこにはシャーリーの姿が。

「寂しい時こそ自分から一歩踏み出す」トニーの言葉を実行した良いシーン。

バレロンガ家も一瞬固まるものの、そこに差別はなく、黒人ピアニストを受け入れる。

奥さんのドロレスは、ツアー中に届いた手紙がシャーリーの助言によって書かれていたことに気付いていたみたい。

躊躇なくハグをして感謝を伝えていた。

詳細

『グリーンブック』

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原作:実話を基に制作

制作国:アメリカ合衆国

制作年:2018年

上映時間:130分

製作費:$23,000,000(約33億円)

【興行収益】

全世界:$318,849,272(約470億円)

日本:21.5億円

スタッフ&キャスト

監督:ピーター・ファレリー、ブライアン・カリー、ポーター・ファレリー

脚本:ニック・バレロン

トニー・“リップ”・バレロンガ役:ヴィゴ・モーテンセン

ドクター・ドナルド・シャーリー役:マハーシャラ・アリ

ドロレス・バレロンガ役:リンダ・カーデリーニ

アカデミー賞

2019年の第91回アカデミー賞で、3部門受賞。

作品賞:『グリーンブック』

助演男優賞マハーシャラ・アリ

脚本賞:ニック・バレロンガ、ブライアン・カリー、ポーター・ファレリー