Netflixにハマる、ルパンにハマる。
ルパンに憧れる、オマールシーを追いかける。
といった流れで、オマールシーの代表作『最強のふたり』を視聴。
ルパンについて書いた記事は下記。
お金持ちそして障がい者
頸椎損傷によって首から下を全く動かすことのできない富豪のフィリップとその介護者に採用されたスラム街出身の黒人ドリス。
生まれも育ちも、今を取り巻く環境も何もかも異なるふたりは次第に欠かせない相棒になってゆく。
被介護者のフィリップはお金持ちの障がい者。
『イカゲーム』では富豪の退屈さが描かれた。
「お金を全く持っていない奴と、
有り余るほど持っている奴の共通点は分かるか?
人生がつまらないということだ。」
by.イカゲーム オ・イルナム
お金を持ちすぎた老人は人生が退屈。
何を買うも食べるも出来てしまう。心からの人との繋がりも持てない。
富豪ならではの鬱憤がある。
富豪であり、首から下が動かない障がいも持つフィリップ。
介護者を雇うための面接では、皆が媚びへつらって自分をアピール。
“介護”という関係になってしまうため、対等に扱われない。
フィリップはそんな環境にどこか飽き飽きしているように見えた。
そこに現れるのが黒人青年ドリス。デリカシーの欠片もない男。
ドリスは失業手当をもらうため、不採用の就活証明書を集めにやってきた。
対等なふたり
ドリスにはデリカシーという概念がなく、障がいを持つフィリップと対等に接する。
あからさまな“介護”をするわけでなく、“障がい者”のフィリップに同情するでもなく、ひとりの人間として扱う。
ドリスの食べるチョコを欲しがるフィリップに「健常者用のチョコだ」と拒むジョークを言ったり、「女性が男性に求めるものは外見や品の良さではなく、お金。生活の保障。その点、あんたは有利だ」と言い放ったり、とにかくデリカシーがない。
障がい者と介護者という障壁を越えた関係に、フィリップは行き過ぎたブラックジョークすらも笑って喜んでいた。
ドリスは敢えて健常者と接するより過激な接し方をすることで、フィリップを理解しようとしたのかもしれない。
誕生日パーティー
毎年開催されるサプライズの誕生会は、親戚を大勢招待する堅苦しい会だとフィリップは語る。
招待された親戚はフィリップの生存を確認しにやってきて、フィリップ本人は驚いたフリをする。その場に集まった皆が無理をするそんな退屈な集まり、と漏らすフィリップからは“対等”に扱われない葛藤が伺える。
本人がそれを言ったところで逆に気を遣わせてしまうため、どうしようもない現実に諦めるしかないという今まで。
だが、ドリスがいる今は違う。
皆の用意してくれた会に応えるように、半ば無理してヴィヴァルディやバッハと言ったバロック音楽を要望するフィリップに、ドリスが風穴を開ける。
アース・ウインド&ファイアーというファンキーな音楽をかけ、皆をあおって踊り出す。
その場にいる全員が笑顔で楽しそうに踊る姿。
セリフのない2分間だったけれど、この映画で一番いいシーンだった。
本当に大事なことは余計なものを削ぎ落したところにある。
実話を基に
この映画は実話を基に作られたもの。
ドリスのような介護者が本当にいたと考えると、凄い。
フランスでは歴代観客動員数で3位を記録しており、第36回日本アカデミー賞の最優秀外国作品部門を受賞するなど、日本でも人気の作品。
ジャンルとしてはバディコメディ映画に分類され、ふたりの男性が一緒になって冒険やロードトリップに出かけるというものらしい。
今まで見た映画では『グリーンブック』に似たものを感じた。
グリーンブックでは差別をテーマに、最強のふたりでは障がいをテーマに描かれていた。
詳細
制作国:フランス
ジャンル:バディコメディ
上映時間:112分
製作費:950万ユーロ(15億円)
興行収入:3.46億ユーロ(5470億円)
日本興行収入:16.5億円
フランス観客動員数:1949万人
キャスト
監督&脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
原作:フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴ / 『Le Second Souffle』
フィリップ役:フランソワ・クリュゼ(小川真司)
ドリス役:オマール・シー(菅原正志)