カッコいいかどうか。普段、私が選択の際に基準としていること。
“カッコいい”にもいろんなカッコよさがある。
20代の今のうちに多くのものに触れて、自分にとっての“カッコいい像”を鮮明にしていく。
その一翼を担うのが映画であり、エンタメである。
『マイインターン』を見た感想をまとめたい。
エンタメの楽しみ方
まず、エンタメの楽しみ方について、持論を述べる。
例えば映画。
楽しみ方は三段階あると思ってる。
①予告やクチコミ、あらすじを確認
②実際に視聴
③考察やレビューに触れる
視聴して、自分なりに感じたことや学びを得る。
その後、考察やレビューを読むことでよりその作品をより深く理解する。
ここまでしてやっと、ひとつの映画を味わい切れると思っている。
ということで、まずは私がこの映画を観て感じたことを、次に考察を見て感じたことをまとめたい。
あらすじ
まずはマイインターンのあらすじから。
若くしてファッションのネット通販サイトを立ち上げ、僅か一年半で会社を大きくした女性起業家ジュールズ・オースティンと、シニアインターンに応募し、70歳で再就職することになったベン・ウィテカー。このふたりが中心に描かれる。
ジュールズは若手女性起業家ならではの葛藤を抱えながら、誰にもその姿を見せずに強くあろうとする。
そこにやってきたシニアインターン生のベンが70歳にしか出せない紳士な振る舞い、人生経験からくるアドバイス、その説得力。
この映画からは、“視点を変えることの大切さ”と“ヴィンテージの味”を学んだ。
視点を変えてみる
今をときめくスタートアップ企業に、おじいちゃん。
そのおじいちゃんが味を出しまくっていて、特に“視点の切り替え”に焦点が置かれていた。
ベンは気付きがいい。
ベテランの余裕なのか、周りをよく“見て”いて、その時に必要な行動を自ら取ることが出来る。
現状、自分の与えられた環境に甘んじることも愚痴をこぼすこともなく、その環境で自分が何をできるのか。
目で見て、脳で考えて、足を使って、行動に移せていた印象を受けた。
与えられるではなく、考える。
「なぜ仕事をくれないか」ではなく、「どうすれば仕事をもらえるか」
現状への不満ではなく、今の自分にできる事。
そんな考え方の多面性に感銘を受けた。
ヴィンテージおじさん
ベンに対して「40歳も年上」と記載されていることからして、ジュールズは30歳。
30歳の社長に、70歳のインターン生。
このミスマッチが、上手く嚙み合っていく様がなかなか面白かった。
現代×古風。
“古き良き、健在”と言わんばかりにベンが活躍する。
女性が涙したらハンカチを差し出す。
「ハンカチは貸すためにある」
家のネクタイは可動式のギミックに収納。
年代モノのアタッシュケース。
器の大きさ。余裕感。
思わずヴィンテージに憧れてしまう程、ベンが格好いい。
現代に溶け込み、うまく融合する古風。
互いを殺さず、活かしあう関係。
大人な余裕に魅了された。
絶対にいい雰囲気な状況でも、圧倒的な年齢差から交わることのないふたり。
互いに支え合いながら、それぞれのパートナーと向き合っていく姿。
干渉はするものの、保つ距離をわきまえる。
そんな大人なハートフル作品だったと私は感じた。
映画の細かい演出について
「いいものを見た。」
映画を観終わった直後の感想はこれだった。
いいものに触れると、深掘りしたくなるのが私の性。
映画は、見て持論を固めてから、他の意見を取り入れるまでがワンセット。
他の意見に触れて、興味深いものがあったからここにまとめる。
①ジャケットを脱ぐ=CEOから降りる
②乗り物の変化は親密度の変化
③物語が動く合図はベル
④夫とベンの対比
⑤スマートなベン
①ベンの初仕事
ジュールズは70歳のシニアインターンを最初は受け入れない。
けど、70歳。若者の中にいると嫌でも目立つ。
ベンに最初に与えられた仕事は醤油をこぼしたジュールズのジャケットのシミ抜きだった。
ベンがジュールズのもとにジャケットを受け取りに尋ねた際、ジュールズはCEO交代の話をされていて、目には涙。
まさにBadタイミング。
ジュールズはベンに泣き顔を見せないために脱いだジャケットをテーブルに滑らすように渡す。
このジャケットを脱ぐという行為が、CEOを降りることを示唆してるんだとか。
確かに上着を脱ぐと、本気を出したと解釈されることもある。
そんな細かいところまで意図を持って作られているのか。
制作する側はそこまで考えているんだろうなというのが今のところの私の考え。
で、言うとジュールズは顔を背けながらジャケットを渡している。
ジャケットが自分の手放したくない役割(CEO)だとすると、業務の忙しさからして、この提案を受け入れなくてはいけないと、半ば諦めの様な、納得のいっていないような受け入れ方を表しているのかもしれない。
②社内で自転車移動
映画序盤のジュールズは、忙しさ故に社内を自転車で移動している。
“映画序盤の”という装飾語をつけたのは、中盤~終盤には全く自転車に乗らなくなるから。
これは私も気付いていて、
「ただの印象付け演出だったのか~、設定の徹底はしてほしかったな」
という浅い考えで思考が停止していた。
物語が進むにつれ、自転車に乗るシーンが映し出されなくなるが、代わりに中盤になるとベンの運転する車に乗るシーンが増えてきて、終盤にはベンとふたりで飛行機に乗った。
自転車→自動車→飛行機
この移り変わりには3つの意味が隠されている。
Ⅰ.規模の変化 Ⅱ.運転手の変化 Ⅲ.行動範囲の変化
Ⅰ.規模の変化
まずは規模の変化。
自転車は1人乗り。自動車は4~5人乗り。飛行機は100人程。
人数としても、個体としても規模が大きくなっていっていることが分かる。
これはそのまま会社の成長にリンクさせているのか、ベンとの関係性の変化を表しているのか。
Ⅱ.運転手の変化
次に運転手の変化。
自転車は自分で運転。自動車はベンの運転。飛行機はパイロットの操縦。
自力で漕いでいたころから、身内・仲間に任せるようになり、最後にはプロに任せるようになっている。
自力で運転しているうちは手が塞がっているため、耳でスケジュールを聞くのが精一杯。運転を任せるとその時間に仕事も電話も出来るようになる。プロに任せると、仲間の手も空くため、仕事をすることも、話をして不安を和らげてもらうこともできる。
ジュールズが徐々に人に頼ることを覚えたという描写なのか、人との関わりを覚えてオープンマインドになっていく演出なのか。
いずれにせよ、緻密で秀逸な演出が為されている。
Ⅲ.行動範囲の変化
最後は行動範囲の変化。
自転車→自動車→飛行機の変化に合わせて、移動距離が明らかに変わる。
移動範囲が増えるということは視野に入るモノヒトが増えるということ。
これも会社の成長なのか、オープンマインドなのか。
これらの比喩表現になっている。
③社内のベル
ジュールズの会社では、好成績やファインプレーをすると社内にあるベルが鳴らされて全社員に知らされ賞賛を受けるシステムが用意されている。
これも序盤に説明があり、終盤に向けては鳴りを潜めて、登場しなくなった。
しかし、“社内のベル”こそ存在感を薄めたものの、“ベル”に着目すると様々な場面で登場する。
この映画内でベルの担う役割は大きく、物語の変化するタイミングでベルが鳴らされていた。
社内で称賛のベル→住居侵入時の警報機→サンフランシスコでの火災報知器
サンフランシスコには、新しいCEOとの面談のために訪れており、そんな面談前夜に火災報知器が作動。
ジュールズが幸先悪いと言ってたように、ベルには何かの変化やきっかけを与えるヒントの様な役割をすることがある。
この映画でのベルはジュールズからベンに対しての信頼構築の際に鳴らされている。
Ⅰ.社内の物置き場化したデスクを片付けたシーン
ベンの存在を肯定するきっかけ
Ⅱ.母の家に侵入し、危険を冒して危機を脱したシーン
ベンへの信頼が確信に変わる
Ⅲ.サンフランシスコでの面談前夜
ベンに弱みを見せる、かけがえのない存在へ
こうやってまとめると、そうとしか思えない。
これを制作した人、その意図を読み取れる人、凄い。
④時に人は迷惑を掛け合って。
サンフランシスコでの新CEO候補との面談前夜。
ジュールズは不安、悩みをベンにさらけ出す。
サンフランシスコに向かう機内でもそうだったが、ホテルの一室で夫の浮気を相談。
ベンはこれに気付いていたわけだが、ふたりの関係性の深さを物語る。
ふたりはベッドでそんな話をしていて、BGM用にTVをつける。
ふたりで同じ方向を向きながら夜に暗い部屋でTVを鑑賞。夫と出来なかった行為をベンで埋め合わせた。
人は時に人に頼りながら、あえて言葉を選ばなければ人に迷惑を掛け合いながら生きている。
旦那に対する不満を他の誰かで埋め合わせ、また日常へと戻っていく。
それをわかりつつ、受け入れられる器を持ち合わせているか。
自分も人に迷惑をかけていると悟ることが出来るか。
⑤Old smart
ベンはこの映画でとにかくスマートに描かれる。
台車の車輪が引っかかったタイミングで手を差し伸べ、人がやろうとしないデスクの片付けを誰よりも早く出社して行い、運転手の体調不良時には代役を買って出る。
“ここぞ”というタイミングでスマートに登場し、サッと帰っていく。
それもがっつきすぎず、必要最低限の事だけを行う。
大人の余裕。慎ましく在るベンがとてもかっこよく映った。
もうひとつ、ベッキーに対して「耳が遠くて…」と言ったシーン。
ベンは70歳だけど、耳が遠いことを示唆するシーンは他になく、これは“優しいウソ”のように思えた。
自分を下に下に。可愛げの演出も忘れていなくて、どこか隙を見せておく。
ベッキーが仕事に悩み、社内で大泣きした際、
「これだけ頑張ってるし、耳だって聞こえる。」なのに、耳すら遠くなっているベンが評価されて悔しい。というシーンがあった。
若者に文句を言う対象を用意してあげる。
そしてそれを微笑んで見守る。
分かる人には分かるこの粋な計らいに拍手。
詳細
『マイ・インターン』
2015年、アメリカ合衆国制作のコメディドラマ映画。
監督・脚本・製作はナンシー・マイヤーズ。
主演はアン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロ。
ちなみに、日本版は『マイ・インターン』で英語版は『The Intern』
マイ・インターンは私のインターン、つまりアン・ハサウェイ視点。
一方、The Internはあるインターン、つまりロバート・デ・ニーロ視点。
日本版と英語版では、主人公が違い、宣伝のされ方が異なるのも特徴。
上映時間は121分。
制作費は3500万ドルで、日本円で約50億円。
全興業収入は1億9000万ドルで、日本円で約280億円。
日本だけでの興行収入は17億5000万円ほどと言われている。