【だが、情熱はある】合う人に会う旅
ふたりを表すのにぴったりな言葉は“闇”
そんなふたりの半生を描いたドラマ『だが、情熱はある』
ふたりの決して楽じゃない生き様を見て、多くの感情が動いた。
それらをここにまとめたい。
ふたりの生い立ち
本題に入る前にふたりの生い立ちについて。
山里亮太
山里は母、父、兄の四人家族。
あらゆることを「凄い」という言葉で締めくくる母に育てられる。
妬み嫉みにまみれたその感情をエネルギーに変えて生きていく、嫉妬と勘違いの天才。
若林正恭
自意識過剰で人見知りな上に、考えすぎる性格の若林。
母、父、姉の四人家族と、祖母を含めた五人で暮らす。
自由に暮らす父と、どんな時も優しい祖母が印象的。
やぶ医者に心臓に穴が開いている、と言われたことをきっかけに父に「感情を出すな」と育てられる。
タイトルの意味
山里と若林のふたりの半生を描いたドラマ『だが、情熱はある』
このドラマのタイトルの“だが”の部分について考えてみた。
通常、「だが」は文頭に使われない。
だが、このドラマのタイトルはこの言葉から始まっている。
つまり、この言葉の前に隠語があるはず。
考えうる隠語
「だが」は、前の語を否定し、反対の意味を強調する際に使われる。
嫉妬心、勘違い、ネガティブ、ひねくれ、自己否定…。
彼らふたりを表す言葉たち。
これらの性格からふたりはいろいろな行動を起こす。
相方にひどい態度でダメ出しの連続、ものに当たる、自分が悪く見えないように芸人の道を諦める方法を探す…。
本当は面白いのに、何かが足りないふたり。
だが、情熱は、情熱だけはある。
こんな意味が込められたタイトルと考える。
お笑いに本気だからこそ、お笑いを突き詰めるからこその感情や行動。
それらはすべてふたりのお笑いに対しての愛。言い換えると情熱。
情熱の山ちゃん
そんな山里亮太の情熱が現れていたシーンを中心に振り返る。
求めるものが大きい
山ちゃんはとにかく本気。お笑いに本気。
それが故に相方には厳しく接するし、本気で求める。
人生の全てをお笑いにかけてると言ってもいいくらいの情熱で、他の人のネタを見てはウケる間やツッコミの数など、ひたすら研究。
それもこれも劣等感。何も持っていないために何かを求めて走り続ける。
優れた人を見て自分の不足を嘆くのではなく、自分の才能を信じて「俺だってできる」「なんで俺が評価されない」と思える才能。
とにかく情熱がすごい。
どんな手も尽くす
そして山ちゃんは求める物のためだったらなんだってする。
盗み聞き、待ち伏せ、事前準備、裏回り…。
とにかく一直線で、どんな手を使っても欲しいものを自分の手によって手繰り寄せようとする。
「勝手に面白いことが起きるわけがない。面白いことが起きる場所へ行くんだよ」
by山里
相方に言った言葉。相方とはお笑いにかける情熱が違ったけれど、これは真理。
他人や環境に理由を見出すのではなく、自分ができる最大限の事をする。
そんな山ちゃんの想いが込められた言葉。
敢えてかは分からないけど、客観性が皆無で、“そんなことをしている自分”を悪く思わないでいられる才能がある。
ノートと対話
山ちゃんはとにかくノートに書く。
ノートに愚痴や不満をこぼすことで、自分と対話していた。
「相方に対する君の態度はひどい」と言われた時、そのまま受け入れて反省して丸まるのではなく、まずノートに書く。
たいてい不満から書き始めるけれど、なんで言われたか、どう思うか、どうすればよいかなど、どんどん深掘りがされていく。
そうして自分の本音と向き合って今後の方針を決めていく。
書くことで自分を知って、そうして進む指針にする。
山里亮太にとってノートは守護神。
情熱の若林
次に、若林正恭の情熱が現れていたシーンを中心に振り返る。
行動が早い
若林は行動が早い、そして素直。
アフロにしてみたり、ノートに目標を書いてスケジュールをつけたり、春日を春日にしたり…。
とにかくいいと思ったことは試している。
考えるすぎる性格なのに、ここは行動が早い。
理由は、明確に目指す場所があるからだと考える。
成りたい自分、欲しいものが明確に決まっているが故に、そうなるために必要なものを無意識に探して生きている。
結果的に芽が出ないものも多いけど、それが功を奏する時もある。
何事も経験あるのみ、である。
「うまそうより、うめえなんだよ人生は」 by若林パパ
考えすぎて、考える
若林は考えて考えて、考える。
考えすぎるからこそネガティブになる。正解を求めてしまう。
ただ、考えた先に気付くことも多い。
行動が伴っていればうまくサイクルが回っていく。
「誰も僕を見ていないのは分かってるけど、僕が見てる」
考えすぎる人はすべからく、これ。
自分の中にもうひとりの自分が存在して、俯瞰から眺めている。
他人の目を気にするというのは、もう一人の自分の目なのではないだろうか。
自分を常に監視しているからこそ、道を外れられない。
これに気付けるくらい考えたとき、何かの鍵が開くかもしれない。
たりないふたり
そんな山里と若林に共通する点をまとめてみる。
あなたは面白い
山里も若林も、身近の人間が「大丈夫、あなたは面白い」と唱える。
どんな時も全肯定してくれるそんな相手が身近にいて、文句を言わせてもらえる(=甘えさせてもらえる)環境がある。
自信を無くし、自己卑下に陥った時、客観的な目線で全面肯定してくれる存在の大きさったらないと思う。
それもこれも彼らが常に本気で進んでいたからだと、そう感じる。
自分を深掘り
ふたりとも、自分という人間をよく理解している。
書く・話すという二大アウトプットをひたすら繰り返して、自分を理解していく。
とにかく行動量が多いからこそ、自分という一番曖昧なものが少しずつ明瞭になっていく。
山里は「しずちゃんをどう活かすか」、若林は「春日をどう活かすか」を考えていて、自分の役割を理解して上に向かう。
金言
最後にこのドラマで私が感銘を受けた金言をまとめる。
おまけといえばおまけだけど、セリフを個人的見解で深掘りします。
興味があればご覧あれ。
「負けて打ちひしがれて生きてる実感を得る。こうやって勝つことの難しさを学ぶ」
by若林パパ
人は死を意識した時に初めて生を意識する、と聞いたことがある。
“負け”や“失敗”に対してどういったイメージを持つのか。
負けた、失敗したと浅い考えで留まるのか、勝ちの難しさを知った、成功のための布石と考えるのか。
考え方、捉え方こそ、100%自分の自由。
「大いに勘違いしてやるよ」
by若林
世の中に抗い続ける若林。
単純に世間の声を鵜呑みにするのではなく、自分の心の奥に潜って理解して自分のしたいように生きる。
それにはエネルギーが必要だけれど、そのエネルギーを劣等感や反骨心から生み出す。
「黒ひげ危機一髪のように勝ちか負けか自由に決めていいと、いつでも勝てそうでいい」
by若林祖母
黒ひげ危機一髪の勝敗は実は自由。
“飛んだら勝ち”or“飛んだら負け”を自由に選んで始めるルール。
“飛んだら勝ち”だと刺す度に勝ちを期待するゲームになり、“飛んだら負け”だと刺す度にドキドキして延命するゲームになる。
人生もこんなもん。
自分の人生の勝ち方は自分で決めてよくて、勝てそうなルールで戦う。
自分が輝くフィールド、自分に有利なルールで挑むこと。
「不幸じゃないと努力ってできない?」
by春日
春日は天然なズレがあるものの、人とは違うものの見方をしているから、たまに考えさせられる言葉を放つ。
まさに山里と若林は負の感情をエネルギーに変えてきた人。
ゼロイチは負の感情がガソリンとなって生まれる。
逆にそこから広げていく際には幸の感情を、心から楽しんだ方が広がるのではないだろうか。
「いいわねえ、予定があるって。何でもない日だけど、なんかあるなって思えてドキドキするしドキドキしなくなる」
by若林祖母
テレビに映っていた社長の助言を試す若林。
目標を立ててそこまでのスケジュールを一日ごとに書き込んでいく。
「何でもない日だけど、なんかあるなってドキドキするしドキドキしなくなる」
矛盾しているようで、矛盾していない。
毎日小さなことでも予定があることで、何でもない日が何かある日に変わって、ドキドキ(=ワクワク)できる。
一方、何もない日特有のドキドキ(=モヤモヤ)がなくなる。
モヤモヤせずにワクワクして生きられるという意味だと解釈した。
「人が本気で悔しかったりみじめな話は面白い」
byラジオスタッフ
つまり、情熱。
人が本気になって向かう先には、“面白い”が隠れている。
逆に言うと、挑戦や何かの出来事を“面白い”と思えれば儲けもの。
何事もやるからには、中途半端ではなく情熱を傾けること。
「いい不幸せ」 by若林
“幸せ”という言葉を簡単に言えない、言わない若林。
簡単に口にすることはできるけど、自分に嘘はつかない性格。
心の底から“幸せ”と言っている人がいるのだろうかと思う世の中で、“いい不幸せ”という、この言葉が一番しっくりくる気がした。
「楽しいとか楽しくないとかじゃない、楽しむかどうか」
by若林パパ
何事も自分次第。自由に気の向くままに生きる若林パパ。
楽しいからやる、楽しくない。ではなく、やっていることを楽しむ。
たとえやらされていることでも、そこから逃げられないのであれば楽しんだもん勝ち。
そんなメッセージを受けた。
「うまそうより、うめぇなんだよ人生」
by若林パパ
この言葉はシンプルなのにすごく刺さった。
“美味しそう”と傍観して頭で想像するのではなく、“美味しい”と実際に体験して肌で感じろ、と言うメッセージ。
他人を傍観する脇役ではなく、自分の人生を生きる主人公になる。
“美味しそう”より、“美味しくない”の方が価値が高い。
「人に買ってきてもらうのはピンポイントだから余白がない。目当てのものを探すついでに他のものを見つけるのがいい」
by若林パパ
ピンポイントだと、そのものしか享受できない。
大事なものは淡さの中に隠れていて、余白があった方がいい。という言葉。
「人生は合う人に会う。誰とでも合う自分じゃないから合った人と会えるように頑張る」
by若林
人と合わなくて、自分を出してしまったそんな自分を自己卑下する。
違う。自分を出さないと、合う人には出会えない。
そんな簡単に理解できないけれど、自分を出す度、合わない人が分かる旅だと信じて自分を出すこと、ありのままでいることを忘れないようにしたい。
そうすればきっと、合う人に出会えるようになっている。
「天才とは尽きない劣等感と尽きない愛のこと」
by若林
愛するから、研究する。
愛するから、感情が動く。
そして劣等感があるから、ガソリンが切れずに続けられる。
山里亮太はそんな劣等感と愛の天才。
ガソリンである劣等感と、注ぐ対象である愛。
どちらも兼ね備える、そんな天才なんだと思う。
その分だけ、何かが足りない…。だが、情熱はある。